日本製鉄 NIPPON STEEL CORPORATION

溶接性

ZAMの品質特性

ZAM®は、他の亜鉛系めっき鋼板と同様に低融点金属であるめっき層の影響を受けます。
アーク溶接においては熱・冷延鋼板に比べてスパッタ、ブローホールの増加、クラック*による強度低下等が
発生し易くなります。しかし、条件を適正に選定すれば接合強度として問題のない継ぎ手が得られます。
また、スポット溶接におきましても適正な溶接条件を選定すれば問題のない強度が得られます。
溶接に際しましては溶接機、継ぎ手形状等の影響もありますので、事前に溶接テストにてご確認下さい。
溶接に関するさらに詳しい技術資料を準備しております。
入手希望の方は弊社担当部署まで御連絡ください

*アーク溶接の場合、溶接部材の形状や構造、溶接の手順等によっては溶接ビード近傍に大きな引張応力が働く場合があります。ZAM®のようなめっき鋼板を溶接した場合、溶接の熱で溶けためっき金属がこの様な大きな引張応力の作用している部分で結晶粒界に侵入し、クラックが発生する事があります。

アーク溶接

1. 溶接機

一般的な市販の溶接機で溶接が可能です。スパッタを低減できるインバータ制御の溶接機がメーカーで開発されていますので、これらを適用することで溶接環境は改善されます。

2. 溶接ワイヤー

通常の軟鋼、構造材用のワイヤーが適用可能です。スパッタ、ブローホール、ピット等の改善のためには、亜鉛めっき用に開発されたワイヤーを使用してください。以下に推奨ワイヤーの例を示します。

3. シールドガス

JIS K 1106に規定される3種炭酸ガスを用います。(パルス電流とAr+20%CO₂ガスの組み合わせを使うと、さらにスパッタが低減される傾向にあります。)

4. 溶接電流、電圧

熱・冷延鋼板と同一の溶接速度で溶接する場合、めっきの蒸発に熱が奪われるため、溶接入熱を熱・冷延鋼板に比べて、若干高めにします。(電流で5〜10%程度)

5. 溶接速度

ブローホール、ピット等の欠陥が発生する場合には、溶接速度を熱・冷延鋼板に比べて低く設定してください。発生する亜鉛蒸気を溶融プール表面から放出させながら進むイメージで溶接を行うと、良好なビードとなります。

6. ギャップの設置

重ねすみ肉溶接の場合、ブローホール、ピット等の溶接欠陥が多発します。これを防止するためには、鋼板間にギャップを設けることが効果的です。ギャップとしては0.6mm以上設けると欠陥は大幅に減少します。

母材鋼種400N級に対する推奨ワイヤー

推奨溶接ワイヤー(シールドガス:炭酸ガス)
汎用ワイヤー 日鉄溶接工業:YM28、大同特殊鋼:DS1A等(YGW12相当)
めっき鋼板用ワイヤー 日鉄溶接工業:YM28Z(G49A0C0)
フラックス入りワイヤー 日鉄溶接工業:SM-1(T49J0T15-0CA-G-UH5)、SM-1F(T49J0TI-0CA-UH5)
高耐食めっき鋼板用
フラックス入りワイヤー
日鉄溶接工業:SF-309SD、FC-309SD

●400N級以外の鋼材用ワイヤーについては別途お問合せください。

ブローホール対策のギャップ例(重ねすみ肉継手)

ブローホール対策のギャップ例(重ねすみ肉継手)

ギャップ設置による溶接欠陥の低減

(ZAM® 板厚 2.3mm、付着量記号 90、重ねすみ肉継手)

ギャップ設置による溶接欠陥の低減

スポット溶接

・めっき鋼板のスポット溶接では、めっき層の溶融により通電経路が拡大し電流密度が低下するため、冷延鋼板に比べて溶接電流を大きくする必要があります。
・電極の銅合金とめっき層中の亜鉛が反応し、電極が損耗することにより電極寿命が短くなりますので、事前に電極寿命を把握し、定期的にドレッシング、交換を実施してください。

各種表面処理鋼板のスポット溶接条件の一例

各種表面処理鋼板のスポット溶接条件の一例

めっき鋼板のスポット溶接(イメージ図)

めっき鋼板のスポット溶接

溶接部分の品質

適正な溶接条件で溶接を行うことにより、溶接部分の溶接強度、溶接内部の断面組織等、品質上問題のない接合が得られます。

断面組織:3.2mm、めっき付着量145/145 g/m2 アーク溶接部

アーク溶接部の状態

断面組織:3.2mm、めっき付着量145/145 g/m2
断面組織:1.6mm、めっき付着量70/70 g/m2 スポット溶接部の状態

スポット溶接部の状態

断面組織:1.6mm、めっき付着量70/70 g/m2

アーク溶接ビード部の外観写真

<従来・溶接条件の一例>

従来溶接条件: インバータ式炭酸ガスアーク溶接機
ワイヤー:YGW12
シールドガス:炭酸ガス

<推奨溶接条件の一例>

推奨溶接条件: パルスMAG溶接機
ワイヤー:YGW12
シールドガス:Ar+20% CO2

適正な条件で溶接することにより、スパッタ等の改善が図れます。